一般社団法人 グローカル政策研究所

阿部孝則の『寡黙な麻雀王者』

第29回連載

前回はクライマックスリーグについてお話ししました。
この頃同時期の2020年にOJSカップというワンデイの放送対局が行われていました。
これはRMUに所属するVIP会員なら誰でも自分の趣味や趣向に合う大会を主催できるというもので放送対局による開催となります。
RMUのVIP会員とはわかりやすく言えば個人協賛の会員です。
そのなかでもアスリート兼任の方をVIPアスリートと呼んでいます。
OJSカップはそんなVIPアスリート会員の汐宮あまねさんが主催の対局でOJSとは〝おじさま〟の略だそうです。
汐宮あまねさんは、若い人や女性が出られる試合や大会は数多くあれどおじさま限定の試合がないのはおかしいとRMUに所属する45歳以上のおじさま限定でこの大会を主催することを思いついたそうです。
ワンデイ大会ということで出場人数には限りがありましたが、出場希望者多数により予選も行われるほどの盛況ぶりでした。
またコスプレ審査などもあり麻雀だけでなくお祭り的な大会仕様になっていました。
私はこの大会にシード選手としてオファーがありOJSカップに出場することになります。
私の他にもA1リーグの45歳以上の面々は全てシード選手として参戦することになります。
結果から言うと私は第1回OJSカップで決勝戦に勝ち上がり更に優勝するのですが、この時初めて主催者の汐宮あまねさんとお話しさせて頂く機会を得ます。
話し方は独特な感じでしたが会話が上手でとても面白い人の印象でした。
正確な年齢などは知りませんでしたがその風貌とは真逆とも言えるほどしっかりしている方だと感じました。
しかしこの時はこの出会いが私にとって大きな大きな意味を待つことを私はまだ知る由もありませんでした。
OJSカップを機に汐宮さんと交流するようになった私は、麻雀を教えて欲しいという汐宮さんたっての希望により月に一度くらいのペースでセットをするようになります。
セットとは仲間内で4人ないし5人集まり麻雀をすることでプロ団体に所属する私たちの間では勉強会の意味合いが強くなります。
そして年も明け2021年のことでした。
この月も予定されていたセットのメンバーの1人が急遽の理由で来られなくなり今回のセットはリスケになってしまいます。
ちょうど良いタイミングかはわかりませんが、事務局の中で汐宮さんのSNSの発信が少しネガティブな内容ですが大丈夫でしょうか?といった話が上がります。
しばらく様子を見てこのような内容が続くなら面談を行うなどの対処をしましょうと言う事になります。
私は少し気になり個人的に連絡をとってみることにします。
もし何か聞いてあげられることがあれば相談にのると伝えます。
ちょうどリスケになったセットの日はお互い予定を入れていなかったので、その日に食事でもしながらお話ししましょうということになります。
この日は汐宮さんが鰻を食べたいとのことで阿佐ヶ谷にある阿づ満やさんで食事をすることになります。
この頃はコロナの真っ只中で飲食店でのアルコール類の提供が自粛されていた頃でもありましたが、時には涙を流しながら色々な悩みを打ち明けてくれた汐宮さんのお話を長い間聴いていました。
この事がきっかけとなり私たちはセット以外でも頻繁に会うようになりお互いに親密を深めていったのです。

第2回OJSカップがこの年は6月に行われました。
この頃私達はすでに付き合いはじめていました。
そのせいで今回は私もコスプレを強要されることになります。
はじめはどうしても嫌だと断り続けていましたが結局は強制的にコナンくんのコスプレをさせられることになります。
コスプレはわりと好評でしたが恥ずかしいことに変わりはありません。
しかし不思議と麻雀には影響せずむしろ好調なくらいでした。
私は今回も決勝へと進出します。
決勝メンツはトータル1位のアスリート島崎さん2位私で3位B級宮田さん4位SS級河野さんの面々です。
1位から4位まで20ポイントほどしか差がなく大激戦です。
決勝は1回戦のみ。
私はその決勝で南場に入りトップ目に立ちます。
トータル1位の島崎さんをラス目に沈めているのでこのまま終われば私の連覇ということになります。
しかし宮田さんや河野さんにあと2局でトップを捲られてしまうと優勝を逃すことになります。
そして正念場となる南3局ラス前です。
この局の配牌がすこぶる悪い私はこの局は守備を重視し受け気味の国士無双狙いとします。
決して余裕がある状態とは言えないのですが、直撃されることだけは避けたい局面です。
この局誰かにツモられてもまだ並びのなので最終局勝負というわけです。
しかし私のツモが思いの外効いてしまいます。
9種10牌だった私の配牌は4巡目に一向聴となり、なんと7巡目にして国士無双を聴牌してしまうのです。
待ち牌は北で場には1枚も切られていません。
特にオタ風と言われる北などはいつ場に放たれてもおかしくない牌なので私も期待に胸が膨らみます。
これをアガリ切れば優勝はほぼ間違いないでしょう。
そして11巡目、トータル1位で現在ラス目の島崎さんからリーチが入ります。
3ソー切りリーチに対し私が掴んだ牌は5ソーです。
2,5,8ソーは全く通っておらず本線と言えるほどの危険牌です。
また島崎さんに打つぶんにはこの半荘のトップ目はキープできますが現在2着目の宮田さんと微差でオーラスを迎えねばならず優勝の確率は下がります。
また島崎さんにはオーラスの親が控えているのも不安材料になります。
この国士無双はアガれば決定打となりますがアガらなくても島崎さんがツモったり他からアガッてくれるならまだ少し余裕のあるオーラスを迎えることが出来ます。
私は長考しましたが意を決して5ソーをツモ切りします。
これには周りはザワついたはずです。
阿部は何をやっているんだ?と。
そして安全牌が無いなか前に進まざるを得ない河野さんから北が河に放たれます。
国士無双をアガリ切りOJSカップの連覇を決めます。
更に私は前期末の9月に行われる2021前期クライマックスリーグでも優勝を果たしてこちらも連覇を果たすことができたのです。

第30回連載へ続く...

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